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平成28年(行ケ)第10005号 審決取消請求事件

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  • 2017/01/30
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事件番号等

平成28年(行ケ)第10005号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成29年1月18日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第1部)

権利種別

特許権(「眼科用清涼組成物」)

訴訟類型

行政訴訟:審決(無効・不成立)

結果

審決取消

趣旨

1 特許庁が無効2015-800023号事件について平成27年12月1日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

取消事由

(1) 取消事由1(「平均分子量」についての記載不備に関する判断の誤り)について
(2) 取消事由2(「0.01~10w/v%」についての明確性要件に関する判断の誤り)について
(3) 取消事由3(平均分子量の範囲(0.5万~4万)についての記載不備に関する判断の誤り)について
(4) 取消事由4(コンドロイチン硫酸又はその塩の濃度の範囲についての記載不備に関する判断の誤り)について
(5) 取消事由5(その他高分子の存在についての記載不備に関する判断の誤り)について
(6) 取消事由6(塩化ナトリウムについての記載不備に関する判断の誤り)について
(7) 取消事由7(清涼組成物についての記載不備に関する判断の誤り)について
(8) 取消事由8(甲1発明に基づく新規性欠如又は進歩性欠如に関する判断の誤り)について
(9) 取消事由9(新アスパクール等に基づく新規性欠如又は進歩性欠如に関する判断の誤り)について
(10) 取消事由 10(甲13発明に基づく進歩性欠如に関する判断の誤り)について
(11) 取消事由 11(新スマイルコンタクトクールに基づく進歩性欠如に関する判断の誤り)について

裁判所の判断

・「平均分子量」という本件特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項2号の明確性要件に違反するものと認められるから,その余の点を判断するまでもなく,審決にはこれを取り消すべき違法があり,原告の取消事由1には理由がある。

・審決は,本件発明の「平均分子量」を「重量平均分子量」と解した上で,本件発明の要旨を認定し,本件発明は,甲1発明に基づき,当業者が容易に発明し得たものとはいえないと判断した。しかし,審決のこの判断も,誤りである。

・原告の取消事由1及び取消事由8には理由があり,その余の点を判断するまでもなく,原告の本訴請求は理由があるから,これを認容する。

キーワード

進歩性(相違点の判断)/特許請求の範囲の記載要件(明確性)/用語の意義(「平均分子量」)/顕著な効果


特許を受けようとする発明が明確であるか否かについて

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  特許法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。この趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。




本件における具体的な判断について

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  ア 「平均分子量」という概念は,一義的なものではなく,測定方法の違い等によって,「重量平均分子量」,「数平均分子量」,「粘度平均分子量」等にそれぞれ区分される(甲17)。そのため,同一の高分子化合物であっても,「重量平均分子量」,「数平均分子量」,「粘度平均分子量」等の各数値は,必ずしも一致せず,それぞれ異なるものとなり得る(甲27)。 イ 本件特許請求の範囲及び本件明細書には,単に「平均分子量」と記載されるにとどまり,上記にいう「平均分子量」が「重量平均分子量」,「数平均分子量」,「粘度平均分子量」等のいずれに該当するかを明らかにする記載は存在しない。


 

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