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知財裁判例速報

平成27年(行ケ)第10201号 審決取消請求事件

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  • 2017/02/06
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事件番号等

平成27年(行ケ)第10201号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成29年1月31日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第2部)

権利種別

特許権(「容器詰飲料」)

訴訟類型

行政訴訟:審決(無効・不成立)

結果

審決一部取消

趣旨

特許庁が無効2013-800159号事件について平成27年8月21日にした審決中,請求項9~16について「請求のとおり訂正を認める。」との部分及び「特許第5256370号の請求項2,5ないし16に係る発明についての審判請求は成り立たない。」との部分を取り消す。

取消事由

1 取消事由1-2(訂正事項D4に係る訂正要件についての判断の誤り)
 (1) 新規事項追加
 (2) 特許請求の範囲の実質的変更等

2 取消事由2-1(本件訂正発明2と引用発明1’の相違点5の容易想到性についての判断の誤り)

3 取消事由2-2(本件訂正発明5と引用発明1並びに引用発明13及び引用発明14との相違点8の容易想到性についての判断の誤り)

4 取消事由2-3(本件訂正発明6と引用発明1との相違点9の容易想到性についての判断の誤り)

5 取消事由2-4(本件訂正発明7と引用発明1’並びに引用発明13’及び引用発明14’との相違点10の容易想到性についての判断の誤り)

6 取消事由2-5(本件訂正発明8と引用発明1との相違点12の容易想到性についての判断の誤り)

7 取消事由2-6(本件訂正発明9と引用発明1’’’並びに引用発明12’’’,引用発明13’’’,引用発明14’’’との相違点14の容易想到性についての判断の誤り)

8 取消事由2-7(本件訂正発明10~16に係る容易想到性についての判断の誤り)

9 取消事由3-2(請求項2,5~16に係るサポート要件の判断の誤り)

10 取消事由3-3(請求項2,5,16に係る実施可能要件及び明確性要件の判断の誤り)

11 取消事由3-4(請求項9~16に係る実施可能要件及びサポート要件の判断の誤り)

12 取消事由3-5(請求項9~16に係る明確性要件の判断の誤り)

裁判所の判断

・原告主張の審決取消事由のうち,
①訂正要件に関する取消事由1-2は理由がなく,
②記載要件に関する取消事由は,
 請求項9~16に係る取消事由3-4(サポート要件違反の点)は理由があり,
 取消事由3-2(請求項2,5~8に係る点)及び取消事由3-3は理由がなく,
③進歩性に関する取消事由は,
 請求項6に係る取消事由2-3,請求項8に係る取消事由2-5は理由があり,
 請求項2に係る取消事由2-1,請求項5に係る取消事由2-2,請求項7に係る取消事由2-4は理由がない。

・よって,審決のうち,請求項6及び8ないし16に係る部分を取り消し,原告のその余の請求は棄却する。

キーワード

進歩性(相違点の判断)/特許請求の範囲の記載要件(サポート要件,明確性)/明細書の記載要件(実施可能要件)/補正・訂正の許否(新規事項の追加,要旨変更,目的要件)


明細書における実験結果等の開示が不十分である際の責任について

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  特許権者である被告が,本件明細書において,イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化がアルコールにより抑制されることを示す実験結果を開示するに当たり,同様に経時的な色調変化を示すことが知られていたL-アスコルビン酸という不純物が含まれる実験系による実験結果のみを開示したことに起因するものであり,そのような不十分な実験結果の開示により,本件明細書にイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化がアルコールにより抑制されることが開示されているというためには,容器詰飲料の色調変化に影響を与える可能性があるL-アスコルビン酸の褐変(色調変化)はアルコール添加の影響を受けないということが,本件明細書において別途開示されているか,その記載や示唆がなくても本件出願日当時の当業者が前提とすることができる技術常識になっている必要がある。
したがって,特許権者である被告において,本件明細書にこれらの開示をしておらず,また,当該技術常識の存在が立証できない以上,本件明細書にL-アスコルビン酸という不純物を含む実験系による実験結果のみを開示したことによる不利益を負うことは,やむを得ないものというべきである。


 


進歩性判断における発明の動機付けについて

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  原告は,本件訂正発明2には,色素を適宜含有したものが含まれ,色素により飲料の色調をどのようなものとするかは需要者の好み等に照らして当業者が適宜決定する設計事項にすぎないと主張する。 しかしながら,引用発明1’を主引用発明とする限り,前記イのとおり,引用発明1’の容器詰モデル飲料には既にアントシアニン系色素が添加されているのであるから,これに更に色素を添加すること自体,何らかの動機付けが必要というべきであるし,既に赤紫色様のアントシアニン系色素が添加されている飲料について,敢えて赤色方向の彩度を示すa*値を採用せず,黄色方向の彩度を示すb*値を採用することには,格別の動機付けが必要というべきであって,引用発明1’の容器詰モデル飲料の色調が設計事項とはいえない。原告の主張は,理由がない。


 

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