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平成28年(行ケ)第10172号 審決取消請求事件

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  • 2017/03/21
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事件番号等

平成28年(行ケ)第10172号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成29年3月14日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第4部)

権利種別

特許権(「エンジン制御装置およびECUケース」)

訴訟類型

行政訴訟:審決(無効・不成立)

結果

請求棄却

趣旨

特許庁が無効2015-800097号事件について平成28年3月24日にした審決中,特許第4794769号の請求項1,3ないし5及び7に係る部分を取り消す。

取消事由

(1) 引用発明1に基づく新規性及び進歩性に係る判断の誤り(取消事由1)
 ア 引用発明1の認定の誤り(取消事由1-1)
 イ 本件発明1の新規性及び進歩性に係る判断の誤り(取消事由1-2)
  (ア) 相違点の認定の誤り
  (イ) 新規性に係る判断の誤り
  (ウ) 進歩性に係る判断の誤り
 ウ 本件発明3の新規性及び進歩性に係る判断の誤り(取消事由1-3)
  (ア) 相違点の認定の誤り
  (イ) 新規性及び進歩性に係る判断の誤り
 エ 本件発明4,5及び7の進歩性に係る判断の誤り(取消事由1-4)

(2) 引用発明2に基づく進歩性に係る判断の誤り(取消事由2)
 ア 本件発明1の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2-1)
 イ 本件発明3の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2-2)
 ウ 本件発明4,5及び7の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2-3)

(3) 明確性要件に係る判断の誤り(取消事由3)

裁判所の判断

原告の本訴請求は理由がない。

キーワード

新規性進歩性/明確性/用語の意義(「外部」・「格納」)

用語の意義について

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  イ 本件発明における「外部」の意義について
(ア) 本件発明は,ECUケースが「外部」に突出する凸部状の突出部を備えることを発明特定事項とするものである。
 特許請求の範囲の記載からは,ECUケースに備えられた凸部状の突出部は,「外部」に突出するものであって,その内部に凹部を備え,ECUケースがスロットルボディに取り付けられるときに,スロットルボディに嵌合されるものであることが分かる。
 「外部」という用語は,一般に「物事のそと側」を意味するところ(広辞苑第6版),本件明細書には,かかる用語の意義について格別に定義した記載は存しない。他方,本件明細書には,前記1のとおり,本件発明は,小型化及び低コスト化を実現するエンジン制御装置及びECUケースを提供することを目的とし,特許請求の範囲の請求項1及び3の構成によれば,スロットルボディとECUケースとを取り付けた際に両者間に生じる空間にECUケースの突出部を納めることができ,エンジン制御装置全体としてより小型化を図ることができるとともに,ECUケースのスロットルボディとの取付け面と反対側の面を最小限の幅で平坦にすることができるという作用効果を奏するものであることが記載されている。かかる目的,作用効果からは,突出部が突出する「外部」を,特に回路基板を有するECUとの位置関係において限定すべき理由はない。
 以上によれば,突出部が突出する「外部」とは,ECUケースがスロットルボディに取り付けられるときに,スロットルボディとの取付け面側を意味するものと解すべきである。


a 本件発明における「格納」の意義について
(a) 本件発明は,突出部の内部に設けられた凹部に,回路基板の一方の面に取り付けられたTPS,吸気圧力センサ及び吸気温度センサの少なくとも一つのセンサを含む,前記回路基板の一方の面から突出した部材を「格納」することを発明特定事項とするものであるが,特許請求の範囲の記載からは,「格納」の意義が一義的に明らかであるとはいえない。
 「格納」とは,一般に「しまい入れること」(広辞苑第六版)を意味するところ,本件明細書には,「格納」について格別に定義した記載は存しない。他方,本件明細書には,前記1のとおり,本件発明は,小型化及び低コスト化を実現するエンジン制御装置及びECUケースを提供することを目的とし,スロットルボディとは別工程において作成された別部材であるECUケースに,外部に突出する凸部状の突出部を設け,突出部の内部に設けられた凹部に,回路基板の一方の面に取り付けられたTPS等の少なくとも一つのセンサを含む,前記回路基板の一方の面から突出した部材を「格納」し,ECUケースがスロットルボディに取り付けられるときに上記突出部がスロットルボディに嵌合されるようにした構成を採用することにより,スロットルボディとECUケースとを取り付けた際に両者間に生じる空間にECUケースの「突出部」を納めることができ,エンジン制御装置全体としてより小型化を図ることができるとともに,ECUケースのスロットルボディとの取付け面と反対側の面を最小限の幅で平坦にすることができるという作用効果を奏するものであることが記載されている。
 本件発明の上記課題及び作用効果に照らせば,本件発明は,スロットルボディとは別工程において作成された別部材であるECUケースに外部に突出する凸部状の突出部を形成することによって,ECUケース内に,回路基板の一方の面から突出した部材の全体を入れ納め,スロットルボディとECUケースとを取り付けた際に,両者間に生じる空間にECUケースの「突出部」を納めることをその課題解決手段とするものであることが理解できる。
 このことは,本件明細書に,各図面に加え,「ECUケース2の外部へ突出した各突起部(凸部)は,ECUケース2の内部に溝部(凹部)を設けることやTPS用突出部27のように円筒状に外部に突出する壁を設けることによって形成されている。そして,ECUケース2の内部に設けられた溝(凹部)による空間には,後述する回路基板100に取り付けられ電気的に接続された各種センサ…が格納される。したがって,上記各溝(凹部)は,上記各種センサおよびその他の電子部品のサイズに基づいてその大きさ(幅,深さ)が決定される。」(【0039】),「具体的には,TPS用突出部(凸部)27は,…ローター9の形状に合わせ,かつスロットルボディ1とECUケース2とを取り付けた際にローター9がTPS用溝(凹部)21に組み付けることができるような位置に配置する。」(【0040】),「また,センサ用突出部以外の突出部であれば,スロットルボディ1の形状に基づいて決定される。より具体的には,スロットルボディ1とECUケース2とを取り付けた際の両者の空間を利用して,突出部(凸部)がその空間に収まるような位置を選択して配置する。したがって,上記空間ができるだけ少なくなるように各突出部(凸部)を配置するのが望ましい。」(【0041】)などと,突出部の形状(その内部の凹部の形状)が,そこに納められる部材の形状によって決定されるものであることを前提とした記載があることからも裏付けられる。
 以上によれば,回路基板の一方の面から突出した部材を「格納」するとは,回路基板の一方の面から突出した部材の全体を入れ納めることを意味するものと解すべきである。


 

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