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平成27年(行ケ)第10256号 審決取消請求事件:逆流防止装置

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  • 2017/04/25
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事件番号等

平成27年(行ケ)第10256号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成29年4月12日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第1部)

権利種別

特許権(「逆流防止装置」)

訴訟類型

行政訴訟:審決(無効・不成立)

結果

請求棄却

趣旨

特許庁が無効2014-800182号事件について平成27年11月25日にした審決を取り消す。

取消事由

1 取消事由1(相違点1に関する新規性判断の誤り)について

2 取消事由2(相違点2の認定の誤り)について

3 取消事由3(相違点2に関する新規性判断の誤り)について

4 取消事由4(相違点1に関する容易想到性の判断の誤り)について

5 取消事由5(相違点2に関する容易想到性の判断の誤り)について

裁判所の判断

・本件訂正発明は甲1発明であるということはできず,これと同旨の審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。

・審決の相違点2の認定には誤りがあるものの,当該誤りは審決の結論を左右するものではないから,原告主張の取消事由2及び5はいずれも理由がない。

・本件訂正発明は甲2発明であるということはできず,これと同旨の審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由3は理由がない。

・本件訂正発明は,甲1発明に基づいて,又は甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから,これと同旨の審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由4は理由がない。

・以上によれば,原告の請求は理由がないから,これを棄却する。

キーワード

進歩性新規性



周知の構成が形式的に共通する場合の進歩性判断について

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  (イ) 原告は,引用発明の認定の際には当業者の技術常識を参酌することができるところ,大気開放口を有する逆流防止装置に関する公知の特許文献160件のうち,「2個の逆止弁間に大気開放口を有する構成」が記載された文献は115件(63%)に及ぶことから,この構成は本件特許の出願前に周知であり,当業者の技術常識であることは明らかであるし,この構成が記載された文献の数(115件)は「大気開放口の下流に逆止弁を設けない構成」が記載された文献の数(22件)の5倍以上であるから,甲1発明において縁切り装置23を2個の逆止弁24の間に配置したものは,「縁切り装置23は逆止弁の後でも良い。」との記載から本件特許の出願時における技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項である旨主張する。
 しかしながら,多くの公知文献に記載された逆流防止装置において,本件訂正発明の「第1の逆止弁」及び「第2の逆止弁」に相当する位置に逆止弁が配置されているとしても(2個の逆止弁の間に大気開放口を有する構成),各配置位置に関する技術的意義はそれぞれに異なるものというべきであるから,これらを捨象して形式的に同配置位置のみを技術上の共通点として抽出することは相当ではない。また,仮に,このような形式的配置位置のみを抽出して甲1発明に適用したとしても,本件訂正発明のように,上水道の圧力低下に応動して大気開放弁を大気開放した場合に,放出される水の一部及び吸い込まれた大気が逆流する事態が生じるという課題があることが知られていない以上,直ちに,この課題が解決されることを認識することができるわけではなく,したがって,これらの水及び大気の逆流を阻止する(第2の)逆止弁の構成を具備しているものと認定することはできない。
 よって,原告の上記主張は,採用することができない。

(ウ) 原告は,2個の逆止弁の間に大気開放口を有する構成を備えた逆流防止装置は,甲27文献等に記載されている旨主張する。
 しかしながら,甲27文献,甲29文献ないし甲32文献及び甲40文献のそれぞれに記載された逆流防止装置における2個の逆止弁(特に,大気開放口の前に配置された逆止弁)の機能は,以下のとおり,それぞれ異なるものであり,これらの逆流防止装置に設けられた2個の逆止弁が同じ技術的意義を有するということはできないから,2個の逆止弁間に大気開放口を有する構成だけを技術上の共通点として形式的に抽出することは相当でない。また,仮に,このような形式的配置位置のみを抽出して甲1発明に適用したとしても,本件訂正発明のように,上水道の圧力低下に応動して大気開放弁を大気開放した場合に,放出される水の一部及び吸い込まれた大気が逆流する事態が生じるという課題があることが知られていない以上,直ちに,この課題が解決されることを認識することができるわけではなく,したがって,これらの水及び大気の逆流を阻止する(第2の)逆止弁の構成を具備しているものと認定することはできない。
 よって,原告の上記主張は,採用することができない。


 

判決文

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