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平成27年(ワ)第36981号 虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求事件等:ユーザ認証方法およびユーザ認証システム

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  • 2017/09/19
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事件番号等

平成27年(ワ)第36981号 虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求事件
平成28年(ワ)第17527号 特許権侵害差止等反訴請求事件

裁判年月日

平成29年8月31日

担当裁判所

東京地方裁判所(民事第47部)

権利種別

特許権(「ユーザ認証方法およびユーザ認証システム」)

訴訟類型

民事訴訟

結果

一部認容

<主文>
  1. 被告は,文書,口頭若しくはインターネットを通じて,別紙原告製品目録記載1の認証用ソフトウェアにおけるパスワード登録システムの使用が,特許第4455666号に係る特許権を侵害し,又は,侵害するおそれがある旨を,需要者,原告の取引関係者その他の第三者に告知し,流布してはならない。
  2. 被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成28年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 原告のその余の本訴請求をいずれも棄却する。
  4. 被告の反訴請求をいずれも棄却する。
  5. 訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
  6. この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

趣旨

  1. 本訴請求
     (1) 主文第1項同旨
     (2) 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成28年1月13日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
     (3) 被告は,朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,日本経済新聞及び産経新聞の各朝刊全国版の社会面広告欄に,別紙謝罪広告目録記載の広告文を同目録記載の条件で,各1回ずつ掲載せよ。
  2. 反訴請求
     (1) 原告は,別紙原告製品目録記載1のソフトウェア製品(以下「原告ソフトウェア」という。)及び同目録記載2のシステム製品(以下「原告システム」といい,原告ソフトウェアと併せて「原告製品」と総称する。)の生産,譲渡又は譲渡の申出をしてはならない。
     (2) 原告は,前項記載のソフトウェア製品及びシステム製品を廃棄せよ。
     (3) 原告は,被告に対し,1000万円及びこれに対する平成28年6月4日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

争点

【反訴について】
  1. 原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)
     ア 本件登録システムは本件発明1の技術的範囲に属するか(争点1-1)具体的には,構成要件1B-2,1B-3,1Cの充足性
     イ 本件登録システム方法は本件発明2の技術的範囲に属するか(争点1-2)具体的には,構成要件2B,2C,2D,2Fの充足性
     ウ 本件ユーザ認証システムプログラムは本件発明3の技術的範囲に属するか(争点1-3)具体的には,構成要件3C,3D,3E,3G,3Iの充足性
     エ 本件ユーザ認証システム装置は本件発明4の技術的範囲に属するか(争点1-4)具体的には,構成要件4B,4C,4D,4F及び4Hの充足性
  2. 本件特許1の無効理由の有無(争点2)
     ア 特許法29条の2違反(争点2-1)
     イ 公然実施(争点2-2)
  3. 原告による間接侵害の成否(争点3)
  4. 直接侵害の教唆・幇助行為による原告の不法行為の成否(争点4)
  5. 被告の損害額(争点5)
  6. 【本訴について】
  7. 本件各書状及び本件メールの送付等は,原告の「営業上の信用を害する」ものか(争点6)
  8. 本件各書状及び本件メールの内容は「虚偽」であるか(争点7)
  9. 被告の行為の違法性・違法性阻却事由の有無(争点8)
  10. 被告の過失の有無(争点9)
  11. 原告の損害額(争点10)
  12. 信用回復措置の必要性の有無(争点11)

裁判所の判断

【反訴について】
  1. 争点2(本件特許1の無効理由の有無)について
    本件発明1は特許法29条の2によって特許を受けられないから,本件特許1には無効理由が認められる。
  2. 争点1(原告製品は本件各発明の技術的範囲に属するか)について
     (1) 争点1-1(本件登録システムは本件発明1の技術的範囲に属するか)について
     本件特許1には無効理由が認められるから,争点1-1(本件登録システムは本件発明1の技術的範囲に属するか)については判断を要しない。
     (2) 争点1-2(本件登録システム方法は本件発明2の技術的範囲に属するか)について
     本件登録システム方法は,構成要件2Cを充足しないというべきである。以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件登録システム方法は,本件発明2の技術的範囲に属すると認めることはできない。
     (3) 争点1-3(本件ユーザ認証システムプログラムは本件発明3の技術的範囲に属するか)について  本件ユーザ認証システムプログラムは,構成要件3Cを充足しないから,その余の点について判断するまでもなく,本件ユーザ認証システムプログラムは,本件発明3の技術的範囲に属するとは認められない。
     (4) 争点1-4(本件ユーザ認証システム装置は本件発明4の技術的範囲に属するか)について
     本件発明4は,本件発明3が「プログラム」に関する発明であるのに対し,「ユーザ認証装置」に関する発明であり,この点において本件発明3と相違するが,その他の構成要件は実質的に同一であるところ,上記(3)と同様の理由により,本件ユーザ認証システム装置は,本件発明4の構成要件4Bを充足しないから,本件発明4の技術的範囲に属するとは認められない。
  3. 争点3(原告による間接侵害の成否)及び争点4(直接侵害の教唆・幇助行為による原告の不法行為の成否)について
     原告による間接侵害ないし直接侵害の教唆・幇助行為による不法行為はいずれも成立しない。
  4. まとめ
     以上のとおり,被告の反訴請求はいずれも理由がない。
  5. 【本訴について】
  6. 争点6(本件各書状及び本件メールの送付等は,原告の「営業上の信用を害する」ものか)について
    (1) 本件書状1及び本件書状2について
     上記各書状の送付は,原告の「営業上の信用を害する」ものとはいえない。
    (2) 本件書状3,本件書状4及び本件メールについて
     上記各書状及び本件メールは,原告の「営業上の信用を害するもの」に該当する。
  7. 争点7(本件各書状及び本件メールの内容は「虚偽」であるか)について
     本件書状3,本件書状4及び本件メールの内容は「虚偽の事実」の告知に当たると認められる。
  8. 争点8(被告の行為の違法性・違法性阻却事由の有無)について
     被告は,その内容及び態様は,社会通念上必要と認められる範囲であるから,被告の行為には違法性がない,又は,正当な権利行使の一環として違法性が阻却される旨主張する。しかしながら,上記各書状等の送付に至る経緯に照らせば,その内容及び態様が社会通念上必要と認められる範囲であるとも,正当な権利行使の一環であるとも認めることはできないから,被告の上記主張を採用することはできない。
  9. 争点9(被告の過失の有無)について
     上記7で説示したとおり,被告が本件書状3,本件書状4及び本件メールの送付に先立って侵害鑑定依頼をした弁理士は被告の当時の代理人弁理士を含めて3名にすぎず,しかも,被告が本件特許1の無効理由について調査した事実も認められないから,被告が,特許権侵害の有無について十分な法的検討をした上で上記各書状等を送付したと認めることはできない。したがって,被告には上記各書状等の送付につき過失があったと認められる。
  10. 争点10(原告の損害額)について
     原告の損害額は300万円と認めるのが相当である。
  11. 争点11(信用回復措置の必要性の有無)について
     原告の求める謝罪広告を命じる必要性までは認められない。
  12. まとめ
     以上によれば,原告の本訴請求は,原告ソフトウェアの開発,製造及び販売が本件特許権1を侵害する行為である旨の告知・流布の差止め,並びに損害賠償金300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
  13. 【結論】
  14. よって,原告の本訴請求は主文の限度で理由があるからその限度で認容してその余を棄却し,被告の反訴請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。

キーワード

拡大された先願の地位/技術的範囲の属否(構成要件充足性)/間接侵害/直接侵害の教唆・幇助行為/虚偽の事実(「営業上の信用を害する」)



 

判決文

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