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平成29年(行ケ)第10003号 審決取消請求事件:アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物

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  • 2017/11/27
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事件番号等

平成28年(行ケ)第10185号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成29年11月21日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第4部)

権利種別

特許権(「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物」)

訴訟類型

行政訴訟:審決(無効・不成立)

結果

請求棄却

趣旨

  1. 特許庁が無効2011-800018号事件について平成28年12月1日にした審決を取り消す。

取消事由

  1. 引用発明1に基づく進歩性判断の誤り(取消事由1)
    本件各発明の顕著な効果の判断の誤り
  2. 引用発明3に基づく進歩性判断の誤り(取消事由2)
    ア 相違点5の容易想到性の判断の誤り
    イ 相違点6の容易想到性の判断の誤り

裁判所の判断

  • 本件発明1の効果は,当業者において,引用発明1及び引用発明2から容易に想到する本件発明1の構成を前提として,予測し難い顕著なものであるということはできず,本件審決における本件発明1の効果に係る判断には誤りがある。
  • 本件発明2は,本件発明1について,化合物Aがさらに「ヒト結膜肥満細胞からのヒスタミン放出を66.7%以上阻害する」という発明特定事項を付加するものである。そして,「ヒト結膜肥満細胞からのヒスタミン放出を66.7%以上阻害する」点は,前記ウと同じ理由により,引用発明1及び引用発明2から容易に想到する本件発明2の構成を前提として,予測し難い顕著なものであるということはできないことから,本件審決における本件発明2の効果に係る判断にも誤りがある。
  • よって,取消事由1は理由がある。
  • 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,本件審決を取り消す。

キーワード

進歩性(相違点の判断,顕著な効果の判断)



実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 なお,本件審判の審理について付言する。

特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは,審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理,審決をするが,再度の審理,審決には,行政事件訴訟法33条1項の規定により,取消判決の拘束力が及ぶ。そして,この拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,審判官は取消判決の認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。したがって,再度の審判手続において,審判官は,取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につきこれを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返すこと,あるいは上記主張を裏付けるための新たな立証をすることを許すべきではない。また,特定の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとの理由により,容易に発明することができたとはいえないとする審決の認定判断を誤りであるとしてこれが取り消されて確定した場合には,再度の審判手続に当該判決の拘束力が及ぶ結果,審判官は同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとはいえないと認定判断することは許されない(最高裁昭和63年(行ツ)第10号平成4年4月28日第三小法廷判決・民集46巻4号245頁参照)。

 前訴判決は,「取消事由3(甲1を主引例とする進歩性の判断の誤り)」と題する項目において,引用例1及び引用例2に接した当業者は,KW-4679についてヒト結膜の肥満細胞からのヒスタミンの遊離抑制作用(ヒト結膜肥満細胞安定化作用)を有することを確認し,ヒト結膜肥満安定化剤の用途に適用することを容易に想到することができたものと認められるとして,引用例1を主引用例とする進歩性欠如の無効理由は理由がないとした第2次審決を取り消したものである。特に,第2次審決及び前訴判決が審理の対象とした第2次訂正後の発明1は,本件審決が審理の対象とした本件発明1と同一であり,引用例も同一であるにもかかわらず,本件審決は,本件発明1は引用例1及び引用例2に基づき当業者が容易に発明できたものとはいえないとして,本件各発明の進歩性を認めたものである。

 発明の容易想到性については,主引用発明に副引用発明を適用する動機付けや阻害要因の有無のほか,当該発明における予測し難い顕著な効果の有無等も考慮して判断されるべきものであり,当事者は,第2次審判及びその審決取消訴訟において,特定の引用例に基づく容易想到性を肯定する事実の主張立証も,これを否定する事実の主張立証も,行うことができたものである。これを主張立証することなく前訴判決を確定させた後,再び開始された本件審判手続に至って,当事者に,前訴と同一の引用例である引用例1及び引用例2から,前訴と同一で訂正されていない本件発明1を,当業者が容易に発明することができなかったとの主張立証を許すことは,特許庁と裁判所の間で事件が際限なく往復することになりかねず,訴訟経済に反するもので,行政事件訴訟法33条1項の規定の趣旨に照らし,問題があったといわざるを得ない。

 

判決文

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