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事業に役立つ商標調査とは

  • 2017/03/24
  • コラム

商標登録出願と先願登録商標との関係性

 出願された商標が、他人の登録商標と同一又は類似の商標であって、かつ、出願に係る指定商品又は指定役務が他人の登録商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似のものである場合は、商標登録を受けることはできません(商標法第4条第1項第11号)。

 そのため、日本特許庁では出願された商標が同一又は類似による拒絶理由に該当するか否かを審査するに当たり、出願された商標の指定商品又は指定役務と他人の登録商標の指定商品又は指定役務との類否を「類似商品・役務審査基準」に基づき判断しています。

商品区分と類似群コード

 商品区分とは、この区分にはこのような商品又は役務を含めましょうといった国際的な取決めによって、ある商品又は役務がどの区分に属するかを定めたものです。
 例えば、第29類には『動物性の食品を含める』と取り決められているため、「牛肉」や「鶏肉」は第29類に属しています。

 また、類似群コードとは、お互いに類似すると推定した商品グループ・役務グループを上記「類似商品・役務審査基準」に基づき定め、各グループの商品又は役務に共通する数字とアルファベットの組み合わせからなる五桁のコードを付したものです。
 そして、同じ類似群コードが付された商品又は役務は、お互いに類似する商品又は役務であると我が国では推定され、その推定を前提に出願された商標について審査が行われます。

 例えば、指定商品を「牛肉」として「ABCD」という商標登録出願をしたときに、指定商品を「鶏肉」とする同一の先願登録商標「ABCD」が存在した場合、「牛肉」に付与された類似群コードは「32A01」であり、「鶏肉」に付与された類似群コードも「32A01」と同一であることから、「牛肉」と「鶏肉」は類似すると推定され、原則として当該商標登録出願には冒頭に挙げた拒絶理由が存在することになります。

J-Plat Patによる商標調査

 商標登録出願を行う際には、同一又は類似する他人の登録商標の有無を事前に調査することが推奨されます。

 そこで、無料で調査が可能なJ-Plat Patによる調査方法がありますが、J-Plat Patによる商標検索機能で検索できる商標は、現在出願係属中の商標又は商標権が存続している登録商標のみであり、既に権利が消滅している商標や、拒絶が確定した過去に出願された商標については検索することができません。

 また、J-Plat Patは『同一の商品又は役務』を指定した『同一の商標を検索』するには適していると思われますが、商標及び指定商品又は指定役務の類否判断については、個別に「類似すると思われるワード』で検索を繰り返すなど膨大な手間をかける必要があります。

出願前に本来行うべき商標調査方法

 無料で検索が行えるJ-Plat Patによる検索は確かに魅力的ではありますが、J-Plat Pat以外の『商用の商標データベース』を用いることで多角的な調査が可能になります。

 商標データベースの中には「同一又は類似する指定商品又は指定役務」と「同一又は類似する商標」を同時に関連付けて検索できるサービスや、拒絶された商標登録出願についての情報を検索できるサービス等が存在します。これらのデータベースを駆使することで、J-Plat Patでは得ることのできない検索結果を基にして、事前に拒絶理由を回避できる可能性はより高まり、また、通知されうる拒絶理由への対策を練った上で商標登録出願を行うこともできます。

 だからこそ、複数の指定商品又は指定役務を指定した商標登録出願を行う場合や、会社にとって重要な商標を出願する際には『商用の商標データベース』を用いて漏れのない調査を行うべきであり、出願に係る手数料等を無駄にしないためにも有用であると考えられます。

商標調査と事業リスク回避

 新製品を発売する際や新たなサービスを開始するときにも商標調査や商標登録出願は必須と言えます。なぜならば、販売した製品のネーミングや開始したサービスのネーミングが他社の登録商標と同一又は類似であり、かつ、指定商品又は指定役務が同一又は類似していた場合、商標権侵害に基づく差止の請求であったり、損害賠償の請求が行われる危険性があるためです。

 そのため、新たな事業や新しい製品を発売する際には他人の商標権の存在に留意する必要がありますし、同一のみではなく類似する範囲も含めた「漏れのない商標調査」を行うことは、事業リスクを事前に回避するためにも必要なことであると言えるでしょう。