知的財産権とはINTELLECTUAL

知的財産権とは

知的財産権とは

 知的財産権とは、動産・不動産といった有体物に認められる所有権とは異なり、アイデア等の無体物を保護する権利を言います。
具体的に知的財産権は、特許権,商標権などの産業財産権、著作権、回路配置利用権、その他知的財産に関して法律上保護される利益に係る権利のことです。なお、知的財産権と産業財産権との大きな違いは、著作権を含むかどうかと言えます。

産業財産権の種類

 産業財産権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の総称のことです。以前は「工業所有権」と称されていましたが、平成14年の政府の知的財産戦略大綱により「工業所有権」から「産業財産権」に改称されました。
特許権と実用新案権は、技術的なアイデア(発明、考案)を保護する権利であり、意匠権は、デザインを保護する権利であり、商標権は、商品名やマークなどの表示を保護する権利です。権利の種類によって保護対象が異なりますので、1つの新商品の模倣を効果的に防ぐためには、1つの商品に対して、特許権(または実用新案権)と意匠権と商標権とで様々な角度から保護を図ることが必要となります。

産業財産権の取り方

 産業財産権は、創作と同時に発生する著作権とは異なり、特許庁に出願をし、審査官による審査を経て初めて発生しますので、まずは出願をすることが必要となります(なお、例外として、実用新案については、出願後、無審査で登録されます)。
出願をするには、まずは保護対象を明確にする必要があります。保護対象に応じて出願の態様を決定する必要があるからです。
自転車を具体例に挙げて、どういった出願態様が有り得るのかを見ていきたいと思います。

自転車のイメージ画像

例①特許権
アシスト機能付きの自転車において、省電力化を実現したプログラムを開発した。
例②特許権
自転車本体の素材として、軽くかつ高剛性の素材を開発した。
例③特許権、実用新案権、意匠権、商標権
ハンドルの形状を、今までにない形状にして、安全性を高めることに成功した。
例④商標権
新製品を開発したので、新たに商品名を考えた。

特許権・実用新案権

 特許権は、技術的なアイデアである発明を保護対象とします。発明は、物や方法について成立します。
実用新案権は、技術的なアイデアである考案を保護対象とします。考案は、発明と比較して、技術的なアイデアという点では同じですが、発明は方法を含むのに対し、考案は形状や構造やこれらの組み合わせに限られますので、この点で発明とは異なります。
したがって、上記の例① 例②において、「省電力化を実現したプログラム」「軽くかつ高剛性の素材」は、技術的なアイデアであり、また、特徴点が形状や構造にはありませんので、これについては、発明として特許出願が可能です。
また、上記の例3において、「安全性を高める」ことができたハンドルの形状については、技術的なアイデアであり、また、特徴点が形状にありますので、これを発明または考案として、特許出願または実用新案登録出願が可能です。

意匠権

 意匠権は、物品のデザインを保護対象とします。
上記の自転車の例では、自転車全体のデザインはもちろんのこと、ハンドルやサドル、ペダルなどの部分的な特徴点についても意匠出願が可能です。
上記の例3において、「今までにないハンドルの形状」については、意匠出願が可能です。

商標権

 商標権は、商品やサービスについて、商品表示(マーク,ネーミング,ロゴ)などを保護対象とします。
したがいまして、上記の自転車の例では、商品名について商標出願が可能です。また、自転車に商品表示としてのマークが付される場合には、それについても商標出願が可能です。
また、上記の例③において、「今までにないハンドルの形状」については、一定の要件を満たせば、立体商標や位置商標として、商標権を取得できる場合があります。
なお、商標権を取得するためには、特許権・実用新案権や意匠権のように、新しさは要求されません。

 このように、新製品を適切に保護するためには、1つの商品に対して、様々な角度から検討をすべきです。例③のように、特許権,実用新案権,意匠権,商標権のいずれの保護対象にも該当する場合がありますが、この場合、特許(実用新案)・意匠・商標すべての出願をするケースもありますし、いずれかを選択するケースもあります。このような出願の選択の基準は、一概には言えませんが、当該技術の重要性,先行技術や先行意匠の存在,ご予算などに応じて決めていくのが一般的と言えます。

 保護対象が明確になったら、次に、出願書類を作成し、特許庁に提出します。

出願書類の作成について

 出願書類は、特許法施行規則などに定められている様式(特許庁HPで公表されています)に従って作成します。また、特許庁での審査の基準が、特許庁HPで公表されていますので、その基準を踏まえて作成する必要があります。

 さらに、もう1つ重要な点があります。
産業財産権を取得する目的は何か、という視点です。権利を取得できればそれでよいかといえばそうではありません。
売れる商品というのは、必ずといっていいほど、真似をする者が現れます。3Dプリンタまで開発された今の時代、形あるほとんどの物は分解・解析することで、模倣が可能です。産業財産権を取得する目的は、この模倣を防ぐという点にあります。
模倣を防ぐためには、新製品そのものはもちろんのこと、一部だけ変更するといった巧妙な模倣の態様を想定し、考えられる態様をできるだけ多く権利範囲に含める必要があります。
模倣を効果的に防ぐことができる価値ある権利を取得するためには、これらを踏まえて出願書類を作成する必要があります。