知財用語集GLOSSARY

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カラオケ法理

 カラオケ法理とは、著作物の利用行為の主体について、現実に著作物を利用しているとは言い難い者であっても、『著作物の利用行為を管理する者』であって『著作物の利用行為により利益を得ることを意図している者』であるならば、著作権法上の規律の観点から利用行為の主体であると評価する考え方を指す。

 例えば、スナックにて客がカラオケ伴奏による歌唱を単独でおこなったとき、客は営利を目的としておらず、かつ、歌唱によって聴衆から料金を徴収する訳でもない。よって、利用行為の主体を客だとすると、当該音楽の著作物に関する演奏権(著作権法21条)は制限され(同法38条1項)、演奏権侵害は生じ得ない。
 しかし、客のみが歌唱する場合であったとしても、客は店側(スナック側)によって設置されたカラオケ装置を通じて『店の管理のもと』に歌唱し、店が客の歌唱を営業の一環として取り入れることで『営業上の利益の増大を意図』しているときは、著作権法上の規律の観点から利用行為の主体は店であると評価できる。以上のことから、店は当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り、演奏権侵害による不法行為責任を免れない( 昭和59(オ)1204号(昭和63年3月15日最高裁判決))。

 なお、「TV番組等をサービス利用者の求めに応じて自動的に送信する機器」を自らの事務所内に設置している等の『支配性』を備えて、『営業上の利益』を目的に当該機器の使用サービスを利用者に提供したなら、サービス提供者が送信行為の主体と成り得る(平成21(受)653号(平成23年1月18日最高裁判決))といった裁判例が多々存在する。よって、カラオケ法理は「カラオケ」との名称が使われてはいるが、演奏権に限定されるものではなく、『支配性』と『営業上の利益』を備える者ならば、著作権のあらゆる支分権に対して利用行為の主体と成り得る点に留意すべきである。



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