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| 事件番号等 | 平成28年(行ケ)第10200号 審決取消請求事件 | ||
| 裁判年月日 | 平成29年3月14日 | ||
| 担当裁判所 | 知的財産高等裁判所(第2部) | ||
| 権利種別 | 実用新案権(「スチームトラップ」) | ||
| 訴訟類型 | 行政訴訟:審決(無効・不成立) | ||
| 結果 | 請求棄却 | ||
| 趣旨 | 特許庁が無効2015-400006号事件について平成28年7月11日にした審決を取り消す。 | ||
| 取消事由 | 1 取消事由1(明確性要件に関する判断の誤り) 2 取消事由2(進歩性判断の誤り) | ||
| 裁判所の判断 | 取消事由は,いずれも理由がないから,原告の請求を棄却する。 | ||
| キーワード | 進歩性(相違点の判断)/特許請求の範囲の記載要件(明確性)/公示送達(「被告代表者は,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない。」) | ||
実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
  原告は,本件考案1のコンデンシングユニットワッシャー(30)のように,傾斜段部に対応した傾斜面を有するリング状のワッシャーは,テーパワッシャーとして周知の技術であり,構造,部位又は分野に制約されることなくシーリングに用いられるものであると主張するところ,甲3,13~18によると,そのような周知技術があること自体は認められる。なお,甲2,4は,上記周知技術があることを裏付ける証拠ということはできない。
 しかしながら,甲1考案のガスケットセパレーター30は,上記(2)のとおりの技術的意義を有しているのであって,甲1考案に上記周知のテーパワッシャーを適用することは,甲1考案の目的に反することとなり,技術的理由の見出し難い改変を加えることであるから,当業者が試みることとはいえない。
 そうすると,甲1考案に原告が主張する周知技術を適用して相違点に係る本件考案1の構成とすることは,当業者にきわめて容易であることとはいい得ないものである。
(4) 原告の主張について
 原告は,甲1自体に,本件考案1のコンデンシングユニットワッシャーのようなシール材を用いることが示唆されていると主張する。
 甲1には,従来技術として,ワッシャータイプガスケット82に関する記載があるが,本体16の外壁面に設けられるものであって(甲1のFig.3),「キャップ132を取外したとき,ワッシャー80(判決注 82の誤記と認める。)は,紛失したり,破損しがちであり,恐らく再度の取付けができない。」(甲1の第4欄51行~55行目)と記載されているから,甲1考案のガスケットセパレーター30とは,配置場所及び構造が全く異なるものであって,甲1にワッシャータイプガスケット82に関する記載があるからといって,甲1考案のガスケットセパレーター30をリング状のワッシャーとして傾斜面を設けることを当業者が試みるということはできない。
 また,原告は,本件考案1のコンデンシングユニットワッシャーは,単なる周知のワッシャーであると主張するが,本件考案1のコンデンシングユニットワッシャーのようなワッシャーが周知であるからといって,何に対しても適用できるものではなく,甲1考案に周知のワッシャーを適用できるものでないことは,上記(3)で説示したとおりである。