| 事件番号等 | 平成29年(行ケ)第10087号 審決取消請求事件 | 
| 裁判年月日 | 平成30年5月14日 | 
| 担当裁判所 | 知的財産高等裁判所(第4部) | 
| 権利種別 | 特許権(「建築板」) | 
| 訴訟類型 | 行政訴訟:審決(無効・成立) | 
| 結果 | 請求棄却 | 
| 主文 | 
	原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。 | 
| 趣旨 | 特許庁が無効2016-800014号事件について平成29年3月22日にした審決のうち,特許第5717955号の請求項1及び2に係る部分を取り消す。 | 
| 取消事由 | 
(1) 本件発明1の進歩性に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 本件発明2の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2)
 
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| 裁判所の判断 | 
相違点B,相違点3及び相違点4は,いずれも当業者が容易に想到できたものであり,本件発明1は,当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。したがって,取消事由1は理由がない。本件発明2は,本件発明1を引用し,さらに「建築板」が「建築物の外装材として用いられる」ことを限定したものである。また,引用発明の「瓦や外壁材等の用途に使用される」「化粧建築板」は,本件発明2の「建築物の外装材として用いられる」「建築板」に相当するものであり,この点は当事者間に争いがない。したがって,本件発明2と引用発明は,相違点B,相違点3及び相違点4において相違し,その余の点で一致する。よって,本件発明1と同様に,本件発明2は,当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり,取消事由2は理由がない。以上検討したとおり,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 | 
| キーワード | 進歩性(相違点の認定,相違点の判断) | 
実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
  発明の進歩性が認められるかどうかは,特許請求の範囲に基づいて本件発明を認定した上で,主引用発明と対比し,一致する点及び相違する点を認定し,相違する点が存する場合には,当業者が,出願時の技術水準に基づいて,当該相違点に対応する本件発明を容易に想到することができたかどうかを判断することとなる。
 このような進歩性の判断に際し,本件発明と対比すべき主引用発明は,当業者が,出願時の技術水準に基づいて本件発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する基礎となるべき具体的な技術的思想でなければならない。
 そして,本件発明と主引用発明との間の相違点に対応する副引用発明があり,主引用発明に副引用発明を適用することにより本件発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する場合には,主引用発明又は副引用発明の内容中の示唆,技術分野の関連性,課題や作用・機能の共通性等を総合的に考慮して,主引用発明に副引用発明を適用して本件発明に至る動機付けがあるかどうかを判断するとともに,適用を阻害する要因の有無,予測できない顕著な効果の有無等を併せ考慮して判断することとなる。
 そうすると,本件発明と主引用発明との間の相違点を認定するに当たっては,発明の技術的課題の解決の観点から,まとまりのある構成を単位として認定するのが相当である。かかる観点を考慮することなく,相違点をことさらに細かく分けて認定し,各相違点の容易想到性を個々に判断することは,本来であれば進歩性が肯定されるべき発明に対しても,正当に判断されることなく,進歩性が否定される結果を生じることがあり得るものであり,適切でない。 
 
判決文