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キャラクターについてライセンス契約を締結する際の留意点

  • 2018/05/14
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 あるキャラクターについて利用許諾契約を締結するとき、どのような点に注意すればトラブルを未然に防ぐことができ、どのような条項を追加することで、商品展開に沿って可能な限り滞りなくキャラクターを利用することが出来るのか、その留意点についてライセンスを受ける側に立って紹介します。

1.利用許諾の対象及び利用範囲を特定する

 漫画やアニメ映画において一定の名称や容貌を持つキャラクターについて、それ自体が著作物であるかのように理解されている方が多くいますが、実はキャラクターといわれるものは漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないことから、著作権法上においてキャラクターそのものは著作物にはあたらないと考えられています(最判平成9年07月17日 平成4(オ)1443)。

 しかし、キャラクターそのものは著作物ではないとしても、特定の「キャラクター」を具体的に表現した図柄は著作物に当たり、描かれた図柄に現れた特徴から当該キャラクターを描いたものであることを知り得る(想起できる)ものであれば著作物の利用(複製)にあたることから、当該キャラクターを利用するためにはライセンス契約が必須となります。
 また、キャラクターについてのライセンス契約を交わす際には、キャラクターの本質的特徴を把握する為にも、出来るだけ多くのイラスト等の情報を具体的に示した別紙を契約書に添付し、当該キャラクターを特定する必要があります。

 しかし、キャラクターを滞りなく利用するためには、当該キャラクターを特定するだけでは不十分といえます。
 なぜなら、キャラクターを利用した商品を展開する上で、別紙に添付した「具体的な表現」のみに表現が拘束されるならば、キャラクターの表情やポーズを変えて利用する等、ニーズに沿った豊かな商品開発も一定の範囲で拘束されてしまう点が懸念されるためです。そして、当該キャラクターが登場する著作物が連載中だとすると、作中にてキャラクターが成長するなどの理由によって、容姿が大きく変化する可能性も考慮しなければなりません。

 つまり、別紙の表現に縛られたキャラクターでは、作品のストーリー展開によっては、顧客吸引力を失うことも考えられるため、このような事態を回避する為にも、『本件キャラクターの本質的特徴を直接感得できる範囲で、本件キャラクターについて新たに創作する行為』等の許諾を得る必要があるといえます。

 また、一般的な著作権の譲渡及びライセンス契約においても、本質的には同一としつつも具体的な表現形式を変える場合等、翻案権を行使する際や著作物を二次的利用する際には、他の財産権(複製権等)とは別に利用許諾を得る必要があります(著作権法61条第2項)ので、その点も併せて留意する必要があります。

2.著作者人格権の不行使特約を定める

 ニーズに沿った商品展開を柔軟に行う上で、キャラクターに一定の改変が必要となるときがあります。しかし、同一性保持権(著作権法20条)等の著作者人格権は一身専属(著作権法59条)であるため、著作者人格権の譲渡は出来ません。そのため、キャラクターの利用許諾を得ていたとしても、公表方法の変更(例えばグラスに利用する予定だったが、マグカップに変更する等)や利用する商品に沿う形でキャラクターの態様を変更するたびに著作権者の許可を得る必要が生じてしまいます。
 よって、逐次許可を得る手間を省くためにも、公表の方法や一定の表現に縛られることなく商品展開をしていくためにも、著作者人格権の不行使を特約で定めたほうがライセンシーとしては望ましいといえます。
 また、人格権の不行使条項の特約を定めることで、Cマークや著作権者の氏名の一体表示を行う必要がなくなるため、商品デザインに幅を持たせることが出来るという利点もあります。

3. 独占的利用の特約を交わす

 ライセンシーとしては可能な限り独占的利用についても検討し、特約を交わすべきといえます。この特約を交わすことによって、当該キャラクターが顧客吸引力を有していれば有しているほど、独占的な利益を得ることが期待できます。

4. 著作権等についての保証条項を定める

 当該キャラクターが第三者の著作権等を侵害していた場合、身に覚えのないことで訴訟の処理等の労力を費やす可能性があります。そのためにも、当該キャラクターを創作した者から第三者の権利を侵害していない旨の保証を得た上で、万が一に備えて責任の所在を予め明確にする必要があります。

5.契約終了後の措置について明記する

 ライセンス契約である以上、契約の終了を念頭に入れて契約を交わさなければなりません。
 仮にライセンス終了と同時に全ての在庫を破棄するとなれば、それに合わせた調整を行わなければならなくなるため、終了時点で製作された商品にはライセンス契約が有効に働くよう明記することがライセンシーとしてば望ましいといえます。

6. 再許諾(サブライセンス)について検討する

 自社の関連会社や子会社が当該キャラクターを利用する可能性があるようなら、再許諾(サブライセンス)権を包括的に取得すべきといえます。ただ、再許諾権も包括的に取得しようとするときは、有効期間満了前に契約が終了した場合のサブライセンシーの地位に係る取扱いについても留意する必要があります。

7. 不可抗力時における免責についての記載する

 自然災害や戦争、内戦、テロ、あるいは、類似の事項を含む当事者がコントロールできない事由によって、入金等などの債務を履行出来ないケースも想定できます。
 そのような不可抗力時において、契約の不履行に関する責任を負わない旨の記載は必要なものとなります。

8.第三者の侵害行為に対する協力の要請について定める

 当該キャラクターにおける独占的利用許諾を得ていない場合、利用者は債権者代位権(民法423条)を行使することは原則として出来ないと考えられます(東地平成14年01月31日 平成13(ワ)12516)。
 そのため、権利侵害に備えて権利者と協力して侵害者を排除する旨の記載は必須と言えるでしょう。
 また、独占的利用許諾を得ているのであれば、債権者代位権を行使することが認められる可能性がありますが、手続きの煩雑さを考慮するならば当規約を交わしたほうが無難であると思われます。

9. 権利者が海外在住であるときの留意点

  1. 源泉徴収税の支払いに関する条項の記載
     権利者が海外居住であれば利用料の支払いには、源泉徴収税が課税されることから、契約上控除なしに「純支払額」を約束してしまうと、支払額にプラスして源泉徴収税も支払う必要が生じてしまうため、「源泉徴収税の支払いに関する条項」が必須となります。
     しかし、相手国と租税条約が2国間で結ばれているときなどは、その限りでない点も留意する必要があります。
  2. 準拠法についての記載
     契約内容に関して裁判となった場合、どの国の法を適用するかについて「準拠法」について取り決める必要があります。