平成29年(行ケ)第10013号 審決取消請求事件:乾麺およびその製造方法
事件番号等
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平成29年(行ケ)第10013号 審決取消請求事件
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裁判年月日
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平成30年4月27日
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担当裁判所
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知的財産高等裁判所(第4部)
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権利種別
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特許権(「乾麺およびその製造方法」)
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訴訟類型
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行政訴訟:審決(無効・不成立)
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結果
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請求棄却
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主文
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- 原告の請求を棄却する。
- 訴訟費用は,原告の負担とする。
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趣旨
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- 特許庁が無効2015-800005号事件について平成28年12月7日にした審決中,請求項2ないし10に係る部分を取り消す。
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取消事由
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(1) 引用発明1Aに基づく進歩性判断の誤り(取消事由1)
ア 本件発明2の進歩性判断の誤り(相違点1-1の判断の誤り)
イ 本件発明3ないし6及び8ないし10の進歩性判断の誤り
(2) 引用発明2に基づく進歩性判断の誤り(取消事由2)
ア 本件発明2の進歩性判断の誤り(相違点2-2及び2-3の判断の誤り)
イ 本件発明3ないし6及び8ないし10の進歩性判断の誤り
(3) 引用発明3に基づく進歩性判断の誤り(取消事由3)
ア 本件発明2の進歩性判断の誤り
イ 本件発明3ないし6及び8ないし10の進歩性判断の誤り
(4) 本件発明7の進歩性判断の誤り(取消事由4)
(5) サポート要件違反に関する判断の誤り(取消事由5)
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裁判所の判断
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- 原告は,乾麺,即席麺の製造において粉末油脂を含む油脂を使用することは,本件優先日当時において周知技術であるところ,引用発明1Aに記載された油は粉末油脂を対象としていないこと,粉末油脂に用いられる極度硬化油は,保存安定性に優れた油脂であることから,引用発明1Aは,粉末油脂の使用までも否定するものではない旨主張する。しかし,乾麺や即席麺の製造において粉末油脂を含む油脂を使用することが周知技術であるとしても,引用発明1Aは,「油を全く使用しない」ことにより保存性を改良することができるようにしたものであり,油脂を添加することに阻害事由があることは,前記イのとおりである。以上によれば,相違点1-1に係る本件発明2の構成を想到することが容易とはいえないから,本件発明2は当業者が容易に発明をすることができたものではない。よって,引用例1Aに基づき,本件発明2ないし6及び8ないし10の進歩性が否定されることはないから,取消事由1は理由がない。
- 原告は,引用発明2において,蒸煮は必須ではなく,実施例3の蒸煮工程のない「乾めん」においては,甲1~3技術事項の高温熱風乾燥を適用して油脂を溶解し,多孔質を得る動機付けがあると主張する。引用例2の実施例1及び2には,いずれも,蒸気で2分間蒸煮する工程が記載されているのに対し,実施例3には,蒸煮を行うとの記載がない。また,実施例1及び2では,得られる製品が「めん製品」であるのに対し,実施例3では,「乾めん」とされているところ,「乾めん」とは,生麺を乾燥させ,常温で長期保存できるようにしたもので,蒸煮工程を経るものではない(甲22,49,98,102)。よって,実施例3では,蒸煮は行われていないと理解するのが自然である。しかしながら,前記(ア)のとおり,実施例3についても,実施例1,2と同様に,「復元性」が「非常によい」と評価されているのであるから,引用発明2の多孔質化技術により多孔質構造が形成されていることは明らかである。そうすると,既に多孔質構造が形成されている引用発明2について,さらに多孔質構造の形成を目的として高温熱風乾燥を採用する動機付けがあるとはいえない。また,前記イのとおり,引用発明2においては,気泡や膨化とは異なる多孔質化技術を利用することに格別な技術的意義があり,乾麺を多孔質化する手段として気泡や膨化によることは,引用発明2の課題解決に反するから,気泡や膨化により多孔質化を実現する甲1~3技術事項を引用発明2に適用することには,阻害事由がある。そうすると,実施例3において蒸煮が行われないとしても,甲1~3技術事項の高温熱風乾燥を適用することはできず,原告の主張は採用できない。
- 以上によれば,本件発明2は,引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。よって,引用例2に基づき,本件発明2ないし6及び8ないし10の進歩性が否定されることはないから,取消事由2は理由がない。
- 原告は,高温熱風乾燥によって,麺線のひび割れを含む過発泡が起きるとの周知の課題の解決のため,高温熱風乾燥の対象を蒸煮麺から生麺に代える動機付けがあると主張する。しかし,引用発明3においては,蒸煮工程を経ずに熱風による膨化乾燥を行うことに阻害事由があることは,前記イのとおりである。したがって,引用発明3において,高温熱風乾燥の対象を,蒸煮工程を経ない生麺とすることを当業者が想到することが容易であるとはいえず,原告の主張は採用できない。
- 以上によれば,本件発明2は,引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。よって,引用例3に基づき,本件発明2ないし6及び8ないし10の進歩性が否定されることはないから,取消事由3は理由がない。
- 原告は,引用発明1Bや引用発明4において,「100%油由来」の「油脂」を含むよう構成するよう想到することが容易であることを,具体的に主張・立証するものではなく,引用発明1Bや引用発明4において,「100%油由来」の「油脂」を含むよう構成したものが,本件発明7の乾麺に相当するものであることについても,主張・立証しないから,原告の主張は採用できない。よって,原告の主張によっては,本件発明7の進歩性が否定されることはないから,取消事由4は理由がない。 ・本件発明2ないし6及び8ないし10は,サポート要件に適合しているから,取消事由5は理由がない。
- よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
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キーワード
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進歩性(相違点の判断)/特許請求の範囲の記載要件(サポート要件)/阻害事由
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判決文