事件番号等
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平成28年(ネ)第10101号 発信者情報開示請求控訴事件
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裁判年月日
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平成30年6月5日
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担当裁判所
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知的財産高等裁判所(第2部)
(原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第17928号)
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権利種別
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著作権(写真の著作物)/著作者人格権
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訴訟類型
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民事訴訟
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結果
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請求一部認容
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主文
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- 原判決を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人米国ツイッター社は,控訴人に対し,
① 被控訴人米国ツイッター社が運営するインターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」(以下,「ツイッター」という。)において,別紙流通情報目録1⑴~⑷記載の各URLにアクセスしたクライアントコンピュータ・モニター画面に,同目録1⑴~⑷「表示される画像」記載の各画像が表示されるように設定した別紙アカウント目録記載アカウント1のアカウントの保有者,
② ツイッターにおいて,クライアントコンピュータが,別紙流通情報目録1⑸記載のURL のウェブページにアクセスした際に,タイムラインに表示される自ら投稿した各短文投稿(以下,ツイッターにおける短文投稿を「ツイート」という。)毎に表示される自らのプロフィール画像として,同目録1⑸「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した別紙アカウント目録記載アカウント1のアカウントの保有者,
③ ツイッターにおいて,クライアントコンピュータが別紙流通情報目録2⑴記載のURL にアクセスした際に表示される,別紙ツイート目録記載ツイート1に表示される画像として,別紙流通情報目録2⑴「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した別紙アカウント目録記載アカウント2のアカウントの保有者,
④ ツイッターにおいて,別紙流通情報目録2⑵記載のURL にアクセスしたクライアントコンピュータ・モニター画面に,同目録2⑵「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した別紙アカウント目録記載アカウント2のアカウントの保有者,
⑤ ツイッターにおいて,クライアントコンピュータが別紙流通情報目録2⑶及び⑷記載のURL のウェブページにアクセスした際に,タイムラインに表示される別紙ツイート目録記載ツイート1に表示される画像として,別紙流通情報目録2⑶及び⑷「表示される画像」記載の画像が表示されるように設定した別紙アカウント目録記載アカウント2のアカウントの保有者,
⑥ ツイッターにおいて,クライアントコンピュータが別紙流通情報目録3~5記載の各URL のウェブページにアクセスした際に,タイムラインに,別紙流通情報目録3~5「表示される画像」記載の各画像が表示されるように設定された別紙ツイート目録記載ツイート1を,別紙流通情報目録3~5「リツイート」記載の各短文投稿として,引用形式で自ら投稿した別紙アカウント目録記載アカウント3~5の各アカウントの各保有者,の各電子メールアドレスを開示せよ。
(2) 控訴人の被控訴人米国ツイッター社に対するその余の請求及び被控訴人ツイッタージャパンに対する請求をいずれも棄却する。
- 訴訟費用については,第1,2審を通じて,控訴人に生じた費用の4分の1と被控訴人米国ツイッター社に生じた費用の2分の1を被控訴人米国ツイッター社の負担とし,その余の費用はすべて控訴人の負担とする。
- 被控訴人米国ツイッター社に対し,この判決に対する上告及び上告受理申立ての付加期間を30日と定める。
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趣旨
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- 原判決を次のとおり変更する。
- 被控訴人らは,控訴人に対し,別紙発信者情報目録記載の各発信者情報を開示せよ。
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争点
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(1) 被控訴人ツイッタージャパンが別紙発信者情報目録の情報を保有しているか
(2) 本件アカウント1及び2につき,ツイート及びタイムラインへの本件写真の表示(流通情報1(6)及び(7),2(3)及び(4))により控訴人の本件著作権及び本件著作者人格権が侵害されたことが明らかであるか(プロバイダ責任制限法4条1項1号)なお,本件プロフィール画像設定行為及びタイムラインへの表示(流通情報1(1)~(5))並びに本件ツイート行為2及び本件ツイート2への表示(流通情報2(1)及び(2))が控訴人の公衆送信権(著作権法23条1項)を侵害することは当事者間に争いがない。
(3) 本件アカウント3~5につき,本件リツイート行為(流通情報3~5)により控訴人の本件著作権及び本件著作者人格権が侵害されたことが明らかであるか(プロバイダ責任制限法4条1項1号)等
(4) 判決確定日時点における最新のログイン時IPアドレス及びこれに対応するタイムスタンプが,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令」(以下「省令」という。)4号の「侵害情報に係るIPアドレス」及び7号の「侵害情報が送信された年月日及び時刻」に該当するものとして,プロバイダ責任制限法4条1項により開示されるべき「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか
(5) 控訴人が発信者情報の開示を受けるべき正当な理由(プロバイダ責任制限法4条1項2号)を有するか
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裁判所の判断
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- 以上によると,控訴人の請求は,被控訴人米国ツイッター社に対して,主文1⑴の電子メールアドレスの開示を求める限度で理由があり,その余は理由がないから,これと異なる原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。
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キーワード
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複製権/公衆送信権/同一性保持権/氏名表示権/プロバイダ責任制限法4条1項/ブラウザ用レンダリングデータ
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実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
ア 同一性保持権(著作権法20条1項) 侵害
前記⑴のとおり,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信されたHTML プログラムやCSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えられているものではない。
しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プログラムやCSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変されたもので,同一性保持権が侵害されているということができる。
…(中略)…
さらに,被控訴人らは,著作権法20条4項の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は,本件アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイートが行われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむを得ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害
本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人の氏名は表示されていない。そして,前記⑴のとおり,表示するに際してHTML プログラムやCSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができる。
判決文