国内書面提出期間内に当該明細書等翻訳文を提出することができなかったことに対する「正当な理由」があるときとは

お知らせ・コラム

知財裁判例速報

平成29年(行ウ)第363号 手続却下処分取消請求事件:Rinse-off compositions

  • 知財裁判例速報
  • 2018/06/19
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

事件番号等

平成29年(行ウ)第363号 手続却下処分取消請求事件

裁判年月日

平成30年5月24日

担当裁判所

東京地方裁判所(民事第46部)

権利種別

特許権(「Rinse-off compositions」)

訴訟類型

民事訴訟

結果

請求棄却

主文

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。
  3. この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。

趣旨

  1. 特願2014-559111号について特許庁長官が平成27年8月6日にした平成26年8月29日付け提出の国内書面に係る手続を却下する処分(以下「本件却下処分1」という。)を取り消す。
  2. 特願2014-559111号について特許庁長官が平成29年4月27日5 にした平成27年7月24日付け提出の出願審査請求書に係る手続を却下する処分(以下「本件却下処分2」という。)を取り消す。
  3. 特願2014-559111号について特許庁長官が平成29年4月27日にした平成27年7月24日付け提出の手続補正書に係る手続を却下する処分(以下「本件却下処分3」という。)を取り消す。

争点

(1) 特許法184条の4第3項及び法184条の5第2項の規定が内国民待遇の原則に違反するか
(2) 原告が国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出しなかったことについて,法184条の4第4項所定の「正当な理由」があるか
(3) 本件却下処分1が違法であることから,本件却下処分2及び本件却下処分3も違法となるか

裁判所の判断

  • 法184条の5第2項は,国際特許出願について,国内書面を国内書面提出期間内に提出しないときに補正を命じることができる旨を定めているのであって,ここに国籍又は言語による取扱いの差異は存在しない。また,国際特許出願のうち,外国語特許出願については,内国民であっても外国語特許出願を行えば,当然に明細書等翻訳文の提出が必要となるのであり,他方,外国国民であっても日本語で国際特許出願を行えば,明細書等翻訳文の提出は不要であり,特許法184条の4第3項において国籍による取扱いの差異はない。したがって,法184条の4第3項及び法184条の5第2項の規定が内国民待遇の原則に違反するとはいえない。
  • 原告は,国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することについて相当な注意を尽くしていたとはいえないと解するのが相当である。以上によれば,本件において,原告が国内書面提出期間内に特許庁に対し翻訳文等翻訳文を提出することができなかったことについて,法184条の4第4項所定の「正当な理由」があるときであったということはできない。

キーワード

特許法184条の4第1項,第4項(正当な理由)/内国民待遇



実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

  法184条の4第4項は,平成23年改正法による改正により新設された規定である。PLTにおいて手続期間の経過によって出願又は特許に関する権利の喪失を引き起こした場合の「権利の回復」に関する規定が設けられ,加盟国に対して救済を認める要件として「Due care」(相当な注意)又は「Unintentional」(故意ではない)のいずれかを選択することを認めているところ(PLT12条),同項新設当時,我が国はPLTに未加盟であったものの,国際的調和の観点から,外国語特許出願の出願人に対し,期間の徒過があった場合でも柔軟な救済を図ることとし,上記のうち「Due care」(相当な注意)基準を採用して,同項を新設したものと解される。
  そして,法184条の4第4項所定の「正当な理由」の意義を解するに当たっては,特許協力条約に基づく外国語特許出願は,国内書面提出期間に明細書等翻訳文を提出することによって,我が国において,国際出願日にされた特許出願とみなされるというものであって,同制度を利用しようとする外国語特許出願の出願人には,自ら国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することが求められていることや,国内書面提出期間経過後の当該外国語特許出願が取り下げられたものとみなされたか否かについての第三者の監視負担を考慮する必要がある。これらを考慮すると,法184条の4第4項の「正当な理由」があるときとは,特段の事情のない限り,国際特許出願を行う出願人(代理人を含む。)として,相当な注意を尽くしていたにもかかわらず,客観的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったときをいうと解するのが相当である。

 

判決文

 RSSリーダーで購読する

内容についてご不明点などございましたら、ご遠慮なくお問い合わせ下さい



知的財産に関するご相談や疑問・質問など、お気軽にお問い合わせください。06-6345-7777 (営業時間:平日 9:00~18:00)